Chapter10:秋の味覚をご一緒に

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「…………あおくんが、一人暮らしするようになったのって……」 「そうだよ。実質的にね、父さんに『追い出された』んだよ。今住んでるマンションは、俺が大学卒業するまで家賃を払ってもらってて、もうすぐ名義も俺に変えるんだ。はなと恋人同士になってなかったら、あのマンションから引越しちゃおうかなぁって思ってた。  ここまで自転車で通える距離だから、名義変更だけして住み続けようかなって今は考えてるよ」 「そっか……」  あおくんが社会人になっても、今のマンションから引っ越さないって知れたのは正直嬉しい。  だけど、それ以外の話の内容が痛々しすぎて……。 (食器拭いてるこの手がもどかしい……)  本当ならこんな事してないで、すぐにあおくんに抱きつきたい。ギューッとハグをしてあおくんが受けた様々な心の傷に包帯を巻いてあげるみたいな気持ちで癒してあげたい。  ……だけど、今あおくんは私にそうさせないとばかりに、買ったばかりのお茶碗を私に渡して、すぐにフキフキして水気をとって乾かしてあげなきゃいけない状況を作っている。
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