Chapter10:秋の味覚をご一緒に

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(私にハグされて慰めてほしいとかじゃ、ないのかな?)  ふと、そんな考えもよぎったけど…… (ううん、きっとそうじゃない。あおくんは敢えて……今私にハグされるよりも、自分の置かれている状況をきちんと私に話さなきゃって、踏ん張っているような気がする)  すぐにそう予想して、あおくんに渡されたタンポポ柄のお茶碗を懸命にフキフキし、優しくシンク横のスペースに伏せて置いておく。 「一人暮らしして、健人さんや商店街の人達の温かさに触れて……俺にとってはすごく良い経験になれてると思う。一人暮らししてなかったらはなと出会わなかっただろうし、久子さんの心の強さも、豊かに実って丁寧に皮を剥かれた……洗練されたみたいな美味しい栗ご飯を食べるなんて出来なかっただろうから」  濯ぎが終わり、私も拭き取り作業を終えたところで、あおくんは私の手を取り見つめてきた。
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