Chapter11:可愛いジェラシー

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* 「ミツキ……さん、かぁ」  澤村くんから教えてもらったその名を呟きながら、あおくんのお部屋に到着して鍵を開ける。 「この前も遊びに来たけど……やっぱり緊張するなぁ」  こんな気持ちになるなら、澤村くんにあおくんの元カノの話なんて訊かなければ良かった。 「やだもぅ……めちゃくちゃ後悔してるよぅ」  家主の居ない部屋に入るっていうのは不思議な感覚がする。  この2ヶ月の間に何度となく訪れて、蒼くんと楽しい時間を過ごしたり寝泊まりしてきたっていうのに、緊張感が半端ない。 「澤村くんから意外にも常識的な事を言われちゃったしなぁ」  私は独り言を言いながら買い物袋から食材を取り出し、キッチンの上に一つずつ置き始めた。 「…………」  部屋の中はシーンと静まり返っている。 「…………」  バスルームを覗いたらきちんと掃除されているし、トイレも清潔に保たれていて、私の部屋と同じ芳香剤が設置されていて、あおくんが私に対して気を遣ってくれているんだろうと想像させ…… (本当だ……澤村くんの言う通りだ。元カノのミツキさんを気にしたって仕方ないじゃない……)  それからまた大きな溜息をついたんだ。
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