48人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「ミツキ……さん、かぁ」
澤村くんから教えてもらったその名を呟きながら、あおくんのお部屋に到着して鍵を開ける。
「この前も遊びに来たけど……やっぱり緊張するなぁ」
こんな気持ちになるなら、澤村くんにあおくんの元カノの話なんて訊かなければ良かった。
「やだもぅ……めちゃくちゃ後悔してるよぅ」
家主の居ない部屋に入るっていうのは不思議な感覚がする。
この2ヶ月の間に何度となく訪れて、蒼くんと楽しい時間を過ごしたり寝泊まりしてきたっていうのに、緊張感が半端ない。
「澤村くんから意外にも常識的な事を言われちゃったしなぁ」
私は独り言を言いながら買い物袋から食材を取り出し、キッチンの上に一つずつ置き始めた。
「…………」
部屋の中はシーンと静まり返っている。
「…………」
バスルームを覗いたらきちんと掃除されているし、トイレも清潔に保たれていて、私の部屋と同じ芳香剤が設置されていて、あおくんが私に対して気を遣ってくれているんだろうと想像させ……
(本当だ……澤村くんの言う通りだ。元カノのミツキさんを気にしたって仕方ないじゃない……)
それからまた大きな溜息をついたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!