Chapter11:可愛いジェラシー

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 お互いぎこちない表情や目線にはなっているんだけど、一応の会話は交わせている。 (このまま会話だけは自然な方向に持っていこう) 「メインのおかずは買ってきたお惣菜なんだけど、お味噌汁は作ったんだよ。寒いから豚汁にしてみたの」  料理の話題を出し、クルリと背を向いて 「豚汁かぁ~食べるの久しぶりだよ」 「うん、そうかなって思って」  会話を続けながらも私だけパタパタと台所の方へ向かう。 「ありがとうはな、ご飯も炊いてくれたみたいだしすごく嬉しいよ」 「うん、炊飯と豚汁作りくらいはやっておこうと思ったからね」 「本当にありがとう」 「どういたしまして!」  会話はいつもの恋人同士らしい甘さがあるんだけど、ハグをしなかったから物理的な触れ合いがない。 (食事をテーブルに持って行かなくちゃいけないってのはあるけど、でもなんかあおくんに触られたり近付かれたりされたくない気分なんだよね……)  夕食の支度という仕事があって良かったと、今日ほど思った日はなかったかもしれない。
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