Chapter:1 出会い

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* 「じゃあ、行ってきます」 「うん、夜道気をつけてね」 「はい、お先に失礼します」 「うん、お花見楽しんできてね」  健人さんに手を降り、俺は教えてもらった桜並木へと自転車を走らせた。 (あんな場所にも桜スポットがあったのか……高校の途中からだから、この地域で暮らすようになって4年半だろ? 桜の時期を4回も通り過ぎているのに全然知らなかったっていうのも不思議だなぁ)  そもそもこの進行方向は俺の生活圏内とは真逆になる。距離としては大した事がないのに、反対方向っていうだけで異世界へのゲートを潜って突入しているような気分になって、ドキドキとザワザワが混じったような心境でいた。 (あ、コンビニがある)  ふと、数十メートル先にコンビニの特徴的な看板が建っている事に気付いた。 「いいなぁコンビニ……」  何故か自然と「いいなぁ」が口からついてしまう。俺のマンションにはスーパーやドラッグストアがすぐ目の前にあるしバイト先は地元民に愛されている商店街にあるから普段の買い物には困らないんだけど、コンビニがないという不満が一つだけある。学生……そしてこの先社会人になる俺にとってはコンビニは癒しエリアでそれが近くにない生活を続けていると、なんとなく胸にぽっかりと穴が空いたようなっていうか。
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