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ある日のこと。
「ナルキッソスー、どこ?」
「ああ、あいつ今、寮に帰ってるみたいだぜ」
休憩中、ナルキッソスを探すヒュアキントスにアドニスはそう教えた。
4人が同居している寮にいるらしい。
「ふーん、4人だと対戦できるんだよな…。ちょっと誘ってみる」
「懲りねえなぁ」
今日は歌のレッスンが主なので、休憩中はバスケをして遊ぶことになっていた。
バスケットボールを持ったまま、ヒュアキントスは寮へと戻っていった。
(ナルキッソス、どこかな?)
キョロキョロしながら歩いていると、ふと一つの部屋のドアが開いているのが見えた。どうやらそこは空き部屋らしい。
(ここかな……?)
そう思って覗いてみると、そこにはナルキッソスがいた。
ドアに背を向けて立っているので、何をしているのかはよく見えなかったが、何やらブツブツ呟いているのが聞こえた。
すると次の瞬間ーーーーーー!!
「ああ、美しい。何て美しいんだ…」
これまで一度も聞いたことがないような甘い声で、ナルキッソスが囁いているのが聞こえた。
「美しい。君は何て美しいんだ…。僕は君以外は誰も好きじゃないんだ」
何と、愛の言葉を囁いているではないか。
「ああ…愛してる。本当に君を愛してる。僕は君しか愛せない。愛してるよ…」
心底驚いたヒュアキントスだったが、彼が愛を囁いている相手を見て、心臓が止まりそうなほどの衝撃を受けた。
ナルキッソスが愛を囁いている相手…
それは鏡に写った、彼自身だったのだ。
(!!!!!!!!!!!!!!)
あまりに衝撃的な光景に言葉を失っていると、動揺のあまり、手に持っていたボールが落ちていった。
(あ!!ダメだ、これは彼の秘密なのに僕に気づかれちゃーーー)
そう思ったが手から落ちたボールは止まるはずもなく、床に落下する音が部屋中に響いた。
バーーーーーーーン!!!!!!
「!!!???」
ナルキッソスは即座にそれに気づいて振り返った。
そして、ヒュアキントスの存在に気づくと、一瞬目を見開いて、茫然と彼を見つめた。
お互いに身動きできず、少しの間見つめ合っていた……。
第3話に続く・・・
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