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「では僕から言おう。僕は欲しいものがあるんだ」
まず初めにそう言ったのはガニュメデスだった。
「僕が欲しいもの、それは星。衛星だよ」
「は・・・?ほ、星?」
「そう、木星の衛星が欲しいんだ。僕からは以上だ、次どうぞ」
呆気に取られる一同を他所に、そう言って話を打ち切った。
次に発言したのはヒュアキントスだった。
「僕とアドニスは同じ願い事なんだ。僕たちは…実は1万3千年前に地球にいた植物神なんだよ。……でも、事情があって今は神格を失ってる。だから僕たちは何としても神格を取り戻したい。そのためにはどんなことだってするつもりだ」
「え、君たちって地球にいたの?」
「うん…今はここにいるけど…」
「僕の願いは…」
ヒュアキントスが話し終わらない内にナルキッソスは語り出した。
「僕の願いを叶えるためにはお前たちの協力が必要だ。僕の目的はただ一つ。自分しか愛せない呪いを解くことだ」
「……はぁ!?」
その答えを聞いた瞬間、3人は思わず声を揃えて叫んだ。
そんな彼らの反応など気にせず、ナルキッソスは自己陶酔しながら語った。
「……僕は、僕だけしか愛せないんだ。僕は僕のことを誰よりも愛している。自分しか愛せない呪いにかかってしまったんだ」
ヒュアキントスは真剣に聞いていたが、アドニスは口に手を当てて難しい顔をし、ガニュメデスはお腹を抱き締めて俯いていた。
そして2人とも小刻みに震えているではないか。
ヒュアキントスは気付いた。
2人が必死に笑いを堪えていることに。
(おいヒュア…どうしよ、俺、笑いそうなんだけど)
アドニスはテレパシーでヒュアキントスにそう語りかけた。
2人はテレパシーで簡単な会話ならすることができるのだ。
(ダメだよ!真剣に話してるのに不謹慎だろ!)
「自分しか愛せない…こんなに不毛な恋をしている者が僕以外にいるだろうか?抱き合うことも触れ合うこともできず…だが愛する気持ちを抑えられないんだ。ああ、こんなに苦しい思いをするならいっそ死んだ方がマシだ」
自己陶酔に浸った顔でナルキッソスは語っている。
(ごめん…俺、もう無理。笑いを堪えるの限界)
(絶対ダメーーーーーー!!!)
アドニスが我慢して限界を越えるギリギリのところで彼の語りは終わった。
「ナルキッソス……」
ヒュアキントスはナルキッソスの話を最後まで真剣に聞いていた。
「お、お前…辛い思いをしてきたんだなぁ」
アドニスは目を滲ませてそうナルキッソスに声をかけた。
笑いそうになるのを堪えて、涙目になっていたのを誤魔化すためだった。
「ナルキッソス……。ありがとう、僕達に打ち明けてくれて。おかげで君のこと、少し理解できたよ。必ず達成しよう、そのために協力し合おう!」
ヒュアキントスも目を潤ませながらナルキッソスの手をギュッと握った。
ナルキッソスは少し照れ臭そうに、ほんの少しだけ頬を赤くして、そっぽを向いた。
(よし……!何とか誤魔化せたぞ……!!)
心の中でガッツポーズをするアドニスと、それを見透かしているかのようにニヤニヤしているガニュメデスだった。
こうして、少年達は同じ気持ちを確認し、少しだけ仲間意識を強めることができたのだった。
第4話に続く・・・
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