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第12話 西風の神ゼピュロス
第12話「西風の神ゼピュロス」
音楽の神アポロンは自社で仕事をしながら、美少年達の指導のことを思案していた。
(うーーーーーん…。覚悟はしていたがやはり歌が下手だな…)
そう思い頭を抱え出した。
(歌の心得があるガニュメデスはともかく…他の3人はいかにも付け焼き刃だな。はっきり言ってあの子たちに音楽の才能はない……)
彼らの歌は素人からすれば悪くないが、音楽の神のトップであるアポロンからすれば明らかにレベルが低く下手だった。
(しかし、一度申し出た以上、面倒を見るしかない…。うん?待てよ…?)
アポロンはある重要なことに気付き、愕然とした。
(私はこれまで、才能がある者しか指導した経験がない…。才能がない者を指導するのは初めてだ!!)
その頃、美少年達はまたしてもマスターから通告を受けていた。
マスターは開口一番こう言った。
それは衝撃的な内容だったーーーー
「諸君。いよいよメジャーデビューしたが、君達は話題になってるとはいえ、まだ足りないものがある。それは・・・スポンサーだ!!」
「スポンサー…?」
「そうだ。君達が所属している事務所はシリウスにある弱小企業の一つにすぎない。つまりシリウスでは無名なのだよ」
4人は唖然とした顔をしていた。
「それはそうだろうね、こんな怪しい『マスター』と名乗る男がいつも指令を与えているんだから。君達だって疑問に思うだろう?しかも君達にはマネージャーすら不在。つまりそういうことだ」
「・・・・・・・・・・・」
「無名の弱小事務所で資金もなく、バックアップは期待できない。資金不足となれば、君達の最終ゴールであるライブ会場を抑えることすら不可能だ。資金提供してくれるスポンサーを見つける必要がある」
マスターは一旦そこで言葉を区切り、一呼吸置いて言葉を続けた。
「そこでだ。君達には自分達でスポンサー企業を見つけてほしい。ノルマは1人3件_だ」
「ええっ!?僕達はまだデビューしたばかりなのに!それにどうやって見つければいいんですか!?」
「それを考えるのも君達の仕事のうちさ」
「そっそんなぁ……」
メンバーはさらに落胆していた。
「オーディションを受けるなり方法はあるだろう。だが手段は問わない。接待をしようが色恋を使おうが。ただし!恋愛は禁止だぞ。もちろん性的関係になることも禁止だ。まあ、頑張ってくれたまえ」
そう言って、マスターを映した立体型投影映像は消えた。
「ど、どうしよう!いきなりスポンサーを見つけろだなんて…」
スポンサーとは、芸能活動を行う者達が企業と契約を結び、その企業の宣材(CM)モデルになる際の広告主のことである。
地球のモデルという職業にあたる、宣材専用で活動している者もいる。
またしても試練が彼らに訪れてしまったのだった。
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