第12話 西風の神ゼピュロス

2/2
前へ
/288ページ
次へ
その日から、美少年達はスポンサー探しに奔走することになった。 まずはオーディションを受けてみたが、どの事務所に所属しているかは大きな要素だった。それに実績も重視される。 無名事務所な上、実績0の彼らは簡単には合格をもらえなかった。 ーーだが。 「僕はもう見つけたよ」 数日後、ガニュメデスが涼しい顔でそう報告した。 「ええ!?もう!?どうやって見つけたの?」 「ゼウス様がスポンサーになってくれた。他にもコネクションを使って」 「はあ~~………」 (コネクション、かあ。僕とアドニスはシリウスに来たばかりだし、ナルキッソスはああいう子だしなあ…) 一瞬、アポロンの顔が頭をよぎった。 (いや、アポロン様にそんなこと頼めない) ヒュアキントスはため息をつくのだった。 そんな彼にある日、思わぬ転機が訪れた。 オーディションの帰り、街を歩いていた時だった。 (ん…?) 誰かに見られているように感じ、ヒュアキントスは思わず振り返った。 その瞬間、突如突風が吹いたかと思うと、そこに一人の男が立っていた。 男は長身で黒い髪をしていた。顔ははっきりと見えなかったが美形であるようだった。 (え……誰……???) 突然風と共に現れた男に驚きながらも、ヒュアキントスはその男に見覚えがあったような気がしたーーー 161b8751-4994-46a2-9c73-c4f9c6fffff7 「やあ、初めまして。私の名はゼピュロス。西風の神だ」 その男はゼピュロスと名乗った。ゼピュロスは西風の神らしい。 ゼピュロスはヒュアキントスに近づきながらこう言った。 ゼピュロスは背が高く整った顔立ちをしていたが、どこか近寄り難い雰囲気を漂わせていた。 ゼピュロスは少し距離を置いて立ち止まった後、こう切り出した。 「風の噂で君達のことは知っていたよ。君はヒュアキントス君、だね?」 ゼピュロスはそう言って微笑んだ。 19451dc2-32bf-499c-9c9c-4323423d0b85 「はい、そうです。知っていただけていたなんて嬉しいです」 「君達は今話題になっているからね。私は風の神だから情報の流通に関わっているんだよ。私の情報が正しければ…君は今、スポンサーを探しているんじゃないか?」 ゼピュロスの言葉に思わずギクッとするヒュアキントスだったが、すぐに平静を装って答えた。 ゼピュロスはその答えを聞いて満足げに頷いた。そしてこう言ったのだ。 君のスポンサーになりたいのだが良いだろうかーーーーとーーーー 第13話に続く・・・
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加