天界アイドル～ギリシャ神話の美少年達が天界でアイドルになったら～

第13話 美の女神アフロディーテ

彼女は美の女神アフロディーテだった。

「アフロディーテ…様。お初にお目にかかります。アドニスと申します」
「あら、礼儀正しいのね。貴方達がシリウスで話題になっているから、会いたかったの。そして…ゼピュロスから聞いたのだけれど」

「？　はい」
「貴方達がスポンサーを探しているという話をね。貴方さえ良ければ、私がスポンサーになってあげてもいいのだけど」

アフロディーテは微笑みながらそう言った。
それを聞いた瞬間、アドニスは驚いて目を見張った。

まさか、あの有名な美の女神アフロディーテからスポンサーになるという申し出があるとは夢にも思っていなかったからだ。

アフロディーテの美しさに目を奪われていたが、仕事脳に頭を切り替えることにした。

アドニスはすぐに了承しようとしたが、ふとあることを思いついたのだ。

（待てよ……？)

アドニスは、女性なら誰もが魅了されてしまいそうなほど魅惑的な笑みを浮かべて、彼女を見つめた。

(これはチャンスだ……！しかも相手は超有名女神だ……！！これを逃せば次はないかもしれない！！）

それはーーー自分が今欲しいと思っているものを手に入れるために彼女を利用することだった。

***

ーーその夜。

ヒュアキントスは、就寝時間になってもナルキッソスの姿が見当たらないことに気付いて心配した。
（部屋にもいないみたいだし…どうしたんだろ？）

気になるので探しに行くことにした。

(ナルキッソス…。アドニスもスポンサーが見つかったし、もしかして落ち込んでたりするのかな…)
ナルキッソスだけがまだ1件も見つかっていなかった。

彼はずっとつまらなさそうな顔をしていたのだ。
（とりあえず探してみようかな……）

近くを探していると、暗がりの中、誰かが1人で踊っているのが見えた。
その人物を見て驚いたのと同時に納得したのだった。

（ナルキッソス……こんなところで練習してたんだ……）

彼は踊りの練習をしていたようだ。彼は汗を流しながら真剣に踊っていた。彼のダンスはとてもキレがあって上手かった。

それを見つめながら、ヒュアキントスはあることに気付いた。

(そうか…彼は、メンバーの中で一番の努力家なんだな……)

普段は無関心で鏡ばかり見ているが、彼はレッスン中に手を抜いたことがなかった。
実は誰よりも真剣に取り組んでいたのだった。

（すごいなあ、あんなに一生懸命に頑張ってるなんて）
ヒュアキントスはその姿を見て、胸が打たれた。

そしてーーー

「！？」
ナルキッソスは驚いたように横を見た。

ナルキッソスから少し離れたところで、ヒュアキントスがダンスの練習を始めたからだった。

それを見たナルキッソスは不機嫌そうにこう言った。
「何だよ、邪魔をするな」

「別に。僕も練習したいから勝手に1人でしてるだけだよ」
ヒュアキントスは微笑みながらそう返した。

ナルキッソスはそれを聞いて、ぶっきらぼうにこう言った。

「ふん。勝手にしろ」

2人は暗がりの中、しばらくの間自主練をしていた。

第14話に続く・・・