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その言葉に少年達は何を言われたのか理解できなかったようだった。
「は…?アイドル…????」
「あの、アイドルって何のことですか?」
少年たちはアイドルという概念自体を知らなかった。
「説明しよう。アイドルとは歌と踊りの芸能を行う容姿端麗な若者たちを指す言葉だ。ただし、天界ではなく地球上の話だ。このシリウス及び天界では、地球の文化に注目が集まっている。天界の文化は確かに高尚でレベルが高いが型にはまって真面目過ぎると、飽きている者たちも少なくない。そこで地球で人間が作っている文化や娯楽に注目を集める者も増えてきている」
男は説明をし出した。
「地球人の作る文化や芸術作品は低俗でレベルも低いが、それが天界の者たちにはかえって新鮮なようで、ウケているのだよ。そんなわけで地球の文化や芸術、娯楽作品をダウンロードして楽しむムーブメントが今天界には起きている。そこで、このプロジェクトが発ち上がったのだ。それは地球で今流行っているアイドル文化を、天界にも誕生させるという一大プロジェクトを!」
男の話に少年たちは茫然として聞くしかなかった。
それはそうだろう。あまりにも突拍子もない話だ。
しかも、この男はそれを本気で言っているのだ。
まるで正気とは思えない内容であった。
しかし、男は真剣そのものの声をしていた。
それを聞いて少年達も冗談ではないことを悟り始めた。
(まさか……本当に……?)
(絶対無理だわ……)
(だいたい、こんな話聞いたことないし……)
各々、心の中でそう考えた。
だが、それを察したかのように男は言った。
「そのために君たちを選んだのだ。厳選して選りすぐった美少年の中の美少年たちを…。これほどの美少年を集めるのにどれほど苦労したことか。ガニュメデス、ナルキッソス、ヒュアキントス、アドニス。もちろん、君たちにはそれなりの報酬を与えよう、その報酬については…もうすでにわかっているね?」
その言葉を聞いた瞬間、少年達は黙り込んだ。
「そう…そのために君たちはここにやってきたのだからな。こちらの提供するプロジェクトを成功させた暁には、それぞれの叶えたい願いを成就させると。事前に伝えていた通りだ。そして、その願い事についてはこちらでもう既知だ。その願い事は君たちがどんな犠牲を払っても叶えたいことだということもな」
その声は自信に満ち溢れていた。
きっと上手くいくと確信しているのだろう。
それほどまでに、この計画に対する熱意が感じられた。
「……………」
「ふふふ…君たちに拒否できないことはわかっている。君たちはこの条件を吞むしかないということも。さあ、天界アイドル誕生プロジェクトをこれより発足する!!!」
自称マスターは高らかにそう宣言した。
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