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第2話 自分を愛した美少年
第2話「自分を愛した美少年」
4人の少年達が集められ、天界アイドルプロジェクトが発足されてから目まぐるしく日々が過ぎ去っていった。
彼らは同じグループでアイドルデビューする仲間となり、結束を深めるために共同生活を命令された。
ガニュメデスを除き、他の少年達は歌もダンスも本格的に習ったこともなくほぼ素人だった。
天界でアイドルとして活動するためにはそれらは必須なので、毎日ハードなレッスン漬けの日々を過ごしていた。
またそれと並行して、教養や知識を習得するための授業も受けなくてはならなかった。
朝から夜までレッスンや授業が続き、それが終わった後は地球のアイドル達のパフォーマンスを鑑賞して学習しなくてはならず、肉体も脳も酷使して毎日クタクタになっていた。
少年達は皆、身体能力も高く運動神経に恵まれていたので、ダンスの上達は比較的早かったが、歌のレッスンに特に苦戦していた。
だが、彼らにとってその生活は決して苦ではなかった。
なぜなら、彼らの目的はただ一つだったからだ。
その目的のために、必死になって練習していた。
その目的の為ならば、どのような苦労も厭わない覚悟があった。
そんな多忙な日々を送る少年達であったが、ヒュアキントスは気掛かりなことがあった。
それはナルキッソスのことだった。
ナルキッソスはいつも一人でいて、皆から孤立しているからだった。
彼らがレッスン生活を始めたばかりの頃、こんなことがあった。
「あー…ダメ、もう動けない…」
「体力バカのお前もさすがにしんどいみたいだな…」
ハードなレッスンが終わった後、ヒュアキントスとアドニスは床に寝たまま、そんな会話を交わしていた。
運動が大好きで体育会系のヒュアキントスは体力には自信があったが、さすがに身体に堪えたようだ。
一方、アドニスも疲労困ぱいの様子だった。
「……………」
二人が床に寝転んでいると、ナルキッソスはそんな二人に見向きもせずレッスン場を去ろうとした。
「あ!待って、ナルキッソス!」
ヒュアキントスは慌てて立ち上がり、ナルキッソスの元に駆け寄っていった。
だが、彼は振り返ることすらしなかった。
それでもめげずに、ヒュアキントスは話しかけた。
「レッスン、きつかったね。でも、仲間として頑張ろうね!」
ニッコリと笑顔でそう声をかけた。
だが……。
「……別に仲間じゃない」
「………え?」
ナルキッソスは冷たい目を向け、こう言い放った。
「僕は、僕の目的のために頑張ってるだけだ。仕方なくお前達と組んでいるが…目的のためだ。お前達と馴れ合う気は一切ない」
「え」
その言葉に、ヒュアキントスは固まってしまった。
ナルキッソスは気にする様子もなく去っていった。
(うわー…拗らせてんなぁ…)
そのやり取りを見ていたアドニスはそう心の中で思った。
そんな出来事があったが、それでもヒュアキントスはめげることなくナルキッソスを気にかけて話しかけていた。
「ねえ、休憩中にみんなで遊ぶんだけど、一緒にどう?」
「断る」
「一人が好きなの?」
ヒュアキントスは優しく微笑んで、そう尋ねた。
「……。いいから向こうに行けよ」
「ふーん…。そっか」
やっとあっちへ行ってくれる…そう思っていたナルキッソスに、ヒュアキントスは笑ってこう告げた。
「いいよ、また誘うから」
それを聞いたナルキッソスは思わず心の中で呟いた。
(………変な奴)
その後、いつ誘っても無視されていたが、めげることはなかった。
そんな中、ヒュアキントスはあることが気になっていた。
(ナルキッソスって…そういえばいつも鏡を見てるな)
常に手鏡を持ち歩き、事ある毎に鏡を見て、自分の姿を眺めているのだ。
(きっと、美意識が高いんだろうな)
そう思い、深くは考えなかった。
しかし、それは間違いであった。
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