そのころサンタさんは

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そのころサンタさんは

 さて、サンタさんがプレゼントを配り始め、何軒か回ったあとのこと。  ソリから降りて、プレゼントのたくさん入った袋をかついで……おや?  何か変だな、と思いましたが、そのまま煙突に入っていきます。  近ごろ少し、お腹まわりが気になるサンタさん。せまい煙突からなんとか抜け出して、クリスマスツリーの下にプレゼントを置いたのですが……やっぱり、何か変です。  うーん、なんだか歩きにくいぞ?  足元を見ると、なんとズボンがずり落ちて、ひざに引っかかっているのです。 「こりゃ大変じゃ!」  驚いたの恥ずかしいのなんのって!  もちろん、ズボンの下には羊の毛でできたタイツを履いています。寒い冬ですからね。  でも赤いズボンがあるのとないのとでは、全然違うのです。あたたかさもそうですが、何より格好がつきません!  だって、赤い上着に白いもこもこタイツでは、誰がサンタクロースだと思うでしょうか?  サンタさんはズボンを押さえながら、やっとのことで来た道を戻り、ソリへたどり着きました。  そして待っていたトナカイたちに、息を切らして言いました。 「困ったぞ、ベルトを忘れてしまった!こうして押さえていないと落ちてきてしまう。ちょうど、大きめに作り直してもらったばかりじゃからなあ」  そうなのです。  去年まではいていたズボンが窮屈になって、小人たちに直してもらったのです。けれども、少し大きくなりすぎたのでした。  ベルトをしめれば大丈夫、と笑っていたのですが……肝心のベルトがありません。  トナカイたちはびっくりして、口々に言いました。 「なんですって!」 「それは大変!」 「そんな風に押さえていたら、配るのに時間がかかって仕方ないですよ!」 「ううむ、どうしたものか」  みんなで頭を抱えていると、トナカイのうちの一頭がひらめきました。 「そうだ! あれがあるはずですよ!」  そして、ソリの中を鼻先で探って、 「これです、プレゼント用のリボン!」  ところどころ銀色に光る、緑色のリボンを見つけてくれました。 「おお、それはいい! いざという時のために、用意してあってよかったわい」 (本当のところ、用意したのは小人たちなんですけどね)  サンタさんはきれいに巻いてあるリボンをシュルっと伸ばして、お腹にくるりと巻き付けました。 「ふうむ。少し、短いかな」  それでも、ぎゅっぎゅっぎゅっときつめに縛って、なんとか形になりました。 「少々きついが、これでうまくいきそうだ」  はらはらしていたトナカイたちも、ほっと息をつきました。 「よかった! では行きましょう!」  すべり出したソリは、たちまち次の家へ。 少し遅くなってしまったので、急がなくてはなりません。  
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