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しばらくの間、お腹がちょっと苦しいな、と思いながら、サンタさんはせっせとプレゼントを配っていきました。
ところが、ある家に入ったとき……
「わん!」
「ひゃあ!」
ツリーの下にいた犬に気が付かず、突然吠えられてびっくり。プレゼントを置いて、一目散にソリまで走りました。
……おや?
嫌な予感です。さっきまできつかったお腹が、全然苦しくありません。おそるおそる見てみると、やっぱり!
「サンタさん、リボンはどうしたんですか!?」
ずり落ちたズボンを見て、トナカイたちが驚いた声をあげました。
「すまん。どこかに落としてしまったようじゃ」
サンタさんはしょんぼりと肩を落としました。
(本当のところは、先ほどの犬が喜んで遊んでいるのです)
「もうリボンはないし、どうしましょう……」
困りました。プレゼントはあと半分も残っています。
ズボンのお腹の辺りを見つめているうちに、サンタさんはいいことを思いつきました。そして、パチンと指を鳴らしました。手袋をしているので、音はしませんでしたが。
「そうじゃ、結んでしまえばいい!」
ズボンのゆるいところを前に集めてきて、お腹を引っ込め、手に力を込め、うんうんうなって、なんとか結びました。
「ふうむ、どうじゃ? だいぶきつくなったが、これで落ちてくるまい」
トナカイたちは感心しました。
「なるほど!」
「これなら大丈夫!」
「サンタさん、いいアイデアですね!」
ほめられて口の端がむずむずしたサンタさんは、なんだか元気が出てきました。
それから、あっちの家こっちの家と、休まずプレゼントを配り続け……
とうとう最後の家にやってきました。
「よし、ここで終わりじゃ!」
ふうふう言いながら入った家の中には、大きくて立派なクリスマスツリーがありました。
その下に、最後のプレゼントをそっと置くと、サンタさんは、ほうっ、と息をつきました。
いつもより少し遅くなりましたが、ベルトは忘れてしまいましたが、おまけにリボンも落としてしまいましたが、とにかくすべてのプレゼントを配り終えたのです。
ふと窓の外を見ると、ずっと向こうの山の上が、うっすら明るくなっていました。
「こりゃいかん!」
みんなが起きる前に行かなくてはなりません。
サンタさんは空っぽになった袋を抱えて、逃げるように家を出ました。いつもより急ぎ足でかけ回っていたからでしょうか。外はとても寒いというのに、汗をかきかき、全速力で走ります。
今か今かと待っていたトナカイたちは、ソリに飛び乗ったサンタさんを見るなりすぐに出発しました。
シャンシャンシャン……
鈴の音を響かせ、ソリは空高く飛んでいきます。
遠くに見える金色の朝の光が、もうすぐみんなの町を照らすでしょう。
「メリークリスマス! 世界中のみんな!」
サンタさんは、今度こそ本当に満足して、にっこり笑いました。
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