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新たな旅立ち
「それじゃあ、瑠璃。お母さん帰るけど」
「うん、気をつけてね」
あっさりした私の返事に、お母さんは少し目が潤んだ。
「やだなあ、一生の別れじゃないんだよ」
泣かせたくなくてふざけて言ったつもりの言葉は、結局お母さんの涙をこぼれ落とさせてしまった。
「あー、もう。これから新幹線乗るんでしょ。あんまり泣くと化粧崩れて、乗り合わせた人がビックリするよ」
「うるさいわね。仕方ないでしょ」
お母さんは鞄をガサゴソ手探りして、ティッシュを取り出した。
涙は堰き止めていたものが溢れるみたいに、どんどん流れていく。
そんな泣かなくても……。
これじゃあ泣いてない自分が薄情みたいだ。
若干、冷めた目で見ていた私を、お母さんは充血した目でそっと抱き寄せた。
「じゃ、しっかりね。高校生活で困った事があったら、いつでも連絡してくるのよ。もちろんお母さんからもするけど」
「はいはい。私は大丈夫。おばあちゃんが一緒だから」
なんとか安心させたくて、お母さんの肩を軽くトントンと叩きながら、笑顔を見せた。どっちかというと、お母さんの方が心配になってきたよ。
「本当に私は大丈夫だから。お母さんこそしっかりしてよ」
背中をさすってなんとか宥めるけど、これじゃあどっちが子供なんだか。
うーん、私に兄妹がいればもう少し違ったのかな? 親離れより子離れの方が問題だったみたい。
これ、新幹線大丈夫かしら?
すると私の少し後ろでずっと見守っていたおばあちゃんが、ずいっと私の隣まで出てきた。
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