モーニング

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「ほんならいつもの珈琲。瑠璃、あんたどうする?」  おばあちゃんがメニューも見ないで注文する。 「え? ちょっと待って」  どうする? って聞いておいて、おばあちゃんはポンポンと言葉を続ける。 「まぁあんたならココアがいいかねぇ? 珈琲は飲めんが? ここは東京のお洒落なカフェじゃないから、なんたらラテとかはないで」  おばあちゃん、本当にせっかちなんだから。  ゆっくりメニュー見る余裕もないよ。  でもおばあちゃんのいう通り、珈琲は飲めないし、まいっか。 「じゃあココアで」  私たちのやりとりを見て、美奈子さんがクスッと笑う。 「はい、じゃあ珈琲にココアね」 「美奈子さん、今日いっくんはおらんのかね?」 「多分、もうすぐ来ますよ……あ、噂をすれば」  美奈子さんの言葉に被さるように、カウンターの奥が賑やかになった。   「うるせー、クソ親父! 手伝ってやるだけありがたいと思いやがれ」 「そんで小遣いもらっとるんだが。いいバイトやろが」 「よそでバイトさせる気もねーくせに、なに言うか」  声とともにカウンターから出てきたのは、日に焼けた肌がよく似合う男の子だった。  わっ……元気いいなぁ。同じ年くらい? 「こら、一樹(いつき)。お店でそんな口きかないの。びっくりするやろが」 「どうせみんな知ってんじゃん。今更だろが」 「今日は違うわよ」  美奈子さんは振り返り、私に視線を送る。  わ、私?  よくわかんないけど、とりあえずお辞儀してみる。
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