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ふとみると、おばあちゃんのお皿はトーストを食べ終えたのに、あんこが残っている。するとおもむろに、おばあちゃんはあんこを珈琲にスプーンで流し入れた。
「えぇー⁉︎」
「さっきからうるさいねえ、瑠璃」
「だっておばあちゃん。あんこ……」
「こうして飲むもんだが」
嘘だー。そんなの見た事ないよ。
呆気にとられている私を見て、美奈子さんがクスクス笑う。
「一般的って事もないけど、こうされるお客様、結構いるのよ」
こういうのをカルチャーショックっていうのかな。
知らない事ばかりでびっくり。
そもそもおばあちゃんの家に泊まりがけで来た時には、朝は普通にジャムトーストだったり、ホットドッグとか。小倉トーストなんて出てきた事なかったもん。
「おばあちゃん、なんで家では小倉トーストしないの?」
「それはな。しのぶが小倉トースト好きじゃないんだよ」
「お母さんが?」
「そう。食べ飽きたとかなんとか。だからあんたらが泊まりに来た時にはしのぶに合わせとったんだが」
そうだったんだ。
お母さん、小倉トースト好きじゃないんだ。こんなに美味しいのに。
「それってさ、飽きたって理由なら、もうずっと食べてないんだし、今食べたら美味しく感じるんじゃないかな?」
「ほうかもしれんね。じゃあ、次にしのぶが帰ってきたら一緒にモーニングくるかね」
「うんっ!」
ふふっ。お母さん、どんな顔するかな?
一緒に来るのが楽しみだ。
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