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「ところで瑠璃ちゃん。紫乃さんから聞いてるけど、高校は城瀬高校だって?」
美奈子さんの問いかけに、私はコクンと頷いた。
「おばあちゃん家から自転車で通えて、学力も丁度よかったので」
「そう。実はね、うちの一樹も城瀬なのよ」
「そうなんですか?」
一樹くんって、さっきの男の子だよね?
最初に挨拶した後からは、彼はせっせと接客したり、厨房に行ったりして忙しそう。
「一樹、瑠璃ちゃんも城瀬なんだって」
美奈子さんの言葉に、お客様への配膳を終えた彼がくるんと振り返る。
「へぇ、そうなのか。じゃあ学校でもよろしくな」
「あ、こちらこそ、よろしくお願いします」
「いっくんが一緒なら安心だわ。よかったが、瑠璃」
おばあちゃんが、うんうんって満足そうに頷く。
「お前、引っ越してきたばっかで、道わかんの?」
学校には何回か足をはこんだけど、いつもお母さんと一緒に行っていた。
覚えてるかって言ったら、覚えてないんだけど。
「スマホの地図見れば、なんとか」
「危なっかしーな。いいよ。入学式、一緒に行こうぜ」
「え⁉︎」
思いがけない提案に、私は思わず大きな声が出てしまった。
「どうせ紫乃ばあちゃんもお袋とくるんだろうし、紫乃ばあちゃんもその方が安心するだろ?」
「そりゃあ、いっくんが一緒に行ってくれるんなら安心だが」
「じゃあ、決まりだ」
それだけ言うと、また厨房へと戻っていった。
当の本人置いてけぼりなんですが……まあ、いいや。
ありがたい申し出。受けておこう。
「よろしくお願いします」
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