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蓮華
おばあちゃんの家から、一番近いスーパーまで徒歩二十分。
おばあちゃんは車で行くけど、私は当然車なんて乗れないから、自転車。
自転車ならそんなに時間かからないし。この季節、自転車漕ぐには気持ちいい。
郊外とはいえ住宅も多い。おばあちゃん曰く、昔は田んぼや畑だった場所に、どんどん家が建っているんだとか。
それでも全ての田んぼがなくなったわけじゃない。そしてその残っている田んぼには今、かわいいピンクの花が咲き始めている。
「かわいい。何の花かな?」
小さなピンクの花。自転車を降りて覗き込んでみる。
う〜ん……見た事がない。
シロツメクサに似ている気もするんだけど。
「何やってんだ? お前」
「っひゃあ!」
不意に頭上から声が降ってきて、変な声が出ちゃった。
声の方を見れば、喫茶店の彼がいた。
「あ……」
一樹くんだ。でもたいして親しくないのに、名前を呼ぶのもな……。
かと言って、苗字、何だったっけ?
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