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おばあちゃんの事。こうして気にかけてくれてる人、いたんだ。
『友達がいる』とは言っていたけど、実際にこうして心配してくれてる人がいる事を知れて、嬉しい。
「ありがとう。おばあちゃんの事、気にかけてくれて」
「当たり前だろう。紫乃ばあちゃんは、うちにとっても大事なばあちゃんだよ」
大事なばあちゃん……。
「あ、おいっ!」
ぽろっとこぼれた涙が、手に持つ蓮華に落ちた。
「いや、泣くなよぉ……」
そう言われても、一度流れ出したものは止まらない。
おじいちゃんがいきなりいなくなってから。
おばあちゃんもいきなりいなくなったらどうしようって思ってた。
ずっと、ずっと元気でいてほしいのに。
おばあちゃん、本当は一人で淋しかったらどうしようって。
だから、私がしっかりしなくちゃって思ってた。
おばあちゃんに笑ってもらえるように。おばあちゃんに元気でいてもらえるように。
でも、他にもちゃんと心配してくれる人がいたんだ。
大事って思ってくれる人が、いたんだ。
「ん」
ぶっきらぼうに突き出されたのは、彼が首にかけていたスポーツタオル。
「汗臭くても我慢しろよ」
どうやらハンカチがわりに貸してくれるみたい。
そっ、と受け取り、顔をうずめてみる。
確かに汗の匂いもするけれど、あたたかいおひさまの匂いがした。
「ありがとう。一樹くん」
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