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「ほら、しのぶ。あんたがいつまでも泣いててどうする。瑠璃は大丈夫だから。さっさと帰りゃあよ」
メソメソしているお母さんにピシャリと言い放つ。
その言葉にお母さんも目を丸くして、おばあちゃんと視線を交わす。
おばあちゃんは孫の私にも普段は優しいけど、決して甘やかしているわけじゃなく、注意する時には注意する厳しいおばあちゃんでもある。
さすが、おばあちゃん。容赦ない。
「本当きついんだから。でも、そうね。瑠璃の事、よろしくお願いします」
さっきまで私に抱きついて泣いてたのに、涙を拭いておばあちゃんに頭を下げる。家族でも親しき仲に礼儀あり、か。
「まあ、こっちはなんとかなるわね。あんたも寂しいからって遠いとこ何度も帰ってこんでよ」
「え? いいじゃない。たまには顔見せるわよ」
「よー言うわ。わたしの顔じゃなくて瑠璃に会いたいんだが。そんな心配せんでもええで、さっさと帰りぃ」
あまりにはっきりした言い分に、お母さんも思わず泣き笑いだ。
「ふふ、そうね。こんなおばあちゃんと一緒なら、瑠璃も安心できるわね」
「うん。大丈夫だから……電話もするし、メッセージも送るよ」
私の言葉に、小さく頷いてお母さんは改札を通り抜けていった。
何度も、何度も振り返りながら、その姿はやがて駅の階段を登り見えなくなった。
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