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「さて、せっかく駅まで出てきたんだから、どっか寄るかね?」
お母さんの姿が見えなくなったところで、おばあちゃんが誘ってくれたけど、私は首を横に振った。
「まだ片付ける事いっぱいだもん。入学式まで後一週間しかないんだよ。あんな段ボールだらけじゃ、生活出来ないもん」
「ほうかね。じゃ、帰ろうか」
言うが早いか、おばあちゃんはさっさと駅から離れていく。
さっきお母さんが私と別れを惜しんでいたのとは、まるで正反対。
さっぱりしているというか、切り替えが早いというか。
親子なのに全然性格違うわ。
「瑠璃、早よ来やー」
気づけばおばあちゃんは私より随分先にいる。
うそでしょ。動き早過ぎじゃない?
「待って、おばあちゃん」
そうお願いしたところで、待っていてくれるおばあちゃんじゃない。
ノンストップでずんずんと先に進んでしまうのだ。
ここは私にとって、右も左もわからない土地。
おばあちゃんという道標を見失うわけにはいかないんだから。
少しの不安と期待に胸を膨らませて、今は先にいるおばあちゃんを追いかけた。
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