モーニング

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モーニング

「瑠璃、瑠璃」 「んー……なに? まだ……」  あたたかい布団の心地よさに浸っていたくて、布団の中に潜りこむ。  おばあちゃんのおうちで私の部屋になったのは、お母さんが結婚前まで使っていた部屋らしい。  なんせあのきっぱりさっぱりしたおばあちゃんと、甘えん坊のお母さんだから。お母さんは色々思い出の品を置いていったらしいんだけど、おばあちゃんは見事に全部箱にまとめて物置へと片付けたらしい。  そのことに対してお母さんは文句言いながらも、そこから回収したものはほとんどないって言うんだから、きっと今となっては何が物置にあるのかわからないくらいなんだろうな。  それでも、卒業アルバムとか、昔の写真が残っていた。  私と同じくらいの歳のお母さん。  ふわんとした可愛らしい笑顔。友達に囲まれて楽しそうな写真。  それらをめくっていくのが楽しくて、ついつい荷解きより夢中になってしまった。  そして、寝不足のまま、今。  春休みなんだし、もうちょっとのんびりしててもいいよね。  ……なんて思っていたのに。途端にガバッと布団を剥ぎ取られた。 「いつまで寝とるの。はよ起きぃ」  あったかい空間を奪われて、一気に春先の肌寒さが襲ってくる。 「おばあちゃん! いきなり布団とったら寒いよっ」 「なーに言っとるの。ねぼすけのあんたが悪いんだが。はよ支度しい」 「支度?」  寝ぼけ眼をこする私に、おばあちゃんはニヤッと笑った。 「モーニング、行こまい」  
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