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これは単に引きこもりの俺が
妹の忘れ物=受験票を届けに行って
迷子になった
だけの話。
読む価値も無い。
くだらない。
だから?
と思う人もいるだろう。
だけど、2年間も家を一歩も出ずに、だだ食って寝るだけだった俺にとっては、途方も無く大きな偉業を成し遂げようとしたことになる。
妹が忘れたのが、よりにもよって受験票でなければ、俺はそれを届けに行かなかった。
俺は高校を受験していない。
だが、そんな俺にだって分かる。
高校受験に受験票を忘れることが致命的だと言うことを。
うちの家族は忘れ物が多い。
脳に何らかの欠陥があるのかも知れないと、親戚の誰かが話していたのを聞いた。
だが、俺よりはマシだ。
その親戚の誰かは、俺が居るのを知るながらそんなコトを話していた。そのことが何よりもの証拠だ。
妹が家を出て1時間程して
母のスマホのバイブが鳴った。
あいにく母はスマホを置いて、出掛けてしまっている。
どこに行ったか?そんなことは分からない。
俺にご飯を出そうとした時に、俺にご飯を出す為の何かを買い忘れていることに気づいたんだろう?
俺の食事の支度の途中で、パジャマを脱ぎ捨てて、鍵も閉めずに駆けて行った。車で。
煩く何度もしつこいスマホが空腹を誤魔化す為の手段=俺の睡眠を邪魔するので、叩いてやろうとしたら、通話ボタンが押されて、妹の声が聞こえた。妹は酷く焦ってお願いをしていたのに、電話に出たのが俺だと分かると諦めを漂わせやがったので悔しくなり、俺は妹が忘れたと騒いでいた受験票を探して届けることにしたのだが、家を出て気づいた。俺には妹がどこを受験するのかすら分からない。
俺は馬鹿なのだ。
それに、片足がいかれている。それが原因で引きこもったことすら忘れてガムシャラに走り、俺は迷子になった。
最悪だ。
俺が受験票を持って来なけば、家に帰った母が気づいて、妹に届けることが出来たかもしれない。
もう間に合わない。
もうすぐ日が沈む。
家に帰ることを諦めて、もうここで寝ようとした時、大きな腹の音が鳴った。
音と音の間で
俺を呼ぶ声がする。
母だ。
目があって、怖くなり逃げた先に、妹がいた。
妹は…怒っている…?
「ごめん。」
そう言おうとした俺を抱きしめて、妹は言った。
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