番外編「一緒に時を」

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 朝ごはんを一緒に片付けてから、真也と電車に乗って街に出てきた。  いろんな店が立ってる、めちゃくちゃ混んでる街。  普段暮らしている、静かなところとは大違い。  改札を出ると、真也はオレを振り返った。 「何が欲しいか少しは考えた?」 「んー……」  もうなんか、こうして一緒に居られるだけでいい。  友達としてじゃなくて、付き合った状態で、真也と居られるなんて、胸いっぱいで。  欲しいものなんて、全然浮かばない。 「……何も、いらないよ?」 「そればっかり」  ふ、と真也は笑う。 「お前の考えてること、あててやろっか」 「……?? うん」  なんだろ、と思って見上げると。 「真也と居れるだけでいい、とか、そんな感じ?」 「――――……」  ぼぼぼ。  顔が一気に熱くなった。  そのオレの顔を見て、頬に触れてくる。 「あっつ、お前」  クスクス笑う真也が大好きだけど、街中だし、真也近すぎるし。  ふ、と手から逃れると、真也は、ふ、と笑ってオレの頭を撫でた。 「そんな気にしなくても、平気。仲いいなって思うくらいだよ」  くす、と笑いながらオレの腕を軽く掴んで引いて歩き出す。 「あたりってことは、もうお前から欲しいものは出て来なそうだから、オレが持ってほしいものを、贈る」 「え。何?」 「一緒に選ぼうぜ」  持ってほしいもの。一緒に選ぶ。  何だろう。  真也に連れられて入ったのは、家電量販店。  何だろう??  どんどん中に進んでいく。 「真也、何買うか決まってたの?」 「うん。どうせ言わないだろうなーと思って」 「……」 「胸いっぱい、って顔してたし」  ……なんか嘘みたい。  真也のこの、キラキラの顔が、オレに向けられてるとか。  しかも、そういう意味で。  今までずっと友達で。  大体どっちか付き合ってる人が居た。どんなに仲が良くても、オレ達は、そんな雰囲気には、絶対ならなかった。オレも、気持ちを微塵も出さなかった。  出していいんだと思ったのと。  真也がすごく優しい瞳で見てくるのと。  ――――……そのせいで簡単に顔が赤くなる。  ……オレ、よく我慢、出来てたな、今まで。  好きでいいとか。好きで居てくれるとか思うと。  嬉しすぎる。  連れていかれて、真也が止まったのは、時計コーナーだった。 「時計……?」 「うん。同じのでいい?」 「?」 「お揃いが嫌なら、デザインだけ違うのでもいいけど」 「……ううん。別に時計、一緒でも全然……」 「指輪とかは目立つだろ。今オレらがするにはさ」 「――――……」  あ。お揃いで。  指輪、とか、してくれる気、あるんだ。  じーん、とウルウルしそうなオレの両目。 「なんか色々調べてたけど、ここら辺が人気っぽい。めちゃくちゃ高いのは買えないけど、これなら二つでも買えるし、故障とかも少ないらしいよ。デザイン、好きならいいかなと思うけど」 「好き」 「……てか、お前、時計見てる?」 「……なんでも好き」 「凌」  苦笑いの真也。  もうウルウルしてんのもバレてるっぽいので、ゴシゴシ目を擦って。ちゃんと時計を見る。 「……あのさ、オレが真也の、買っちゃダメ?」 「何で。オレが買うつもりで連れてきたし」 「でも、真也のはオレが買いたい。オレが買ったの、つけてほしい」 「んー……じゃあ分かった。時計はお互いプレゼントな」 「うん!」 「今日、誕生会してやるから。そつちはオレが全部用意する」 「うん」  誕生会だって。  ……ふふ。  うれしーなー。  それから、一緒に選んで、一緒に買った。  どっちもプレゼントにって言って、店員さんは普通に受けてくれたけど、なんかちょっと変かな?と、二人で笑いながら包装を待った。 (2023/12/15) も少し続きます。  
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