1-2 やっぱり魔女様の勘違いでは、恐れ多いけれど

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 取りつく島がない上に、退路が断たれた。  このままでは私は出来もしない占い師にされかねない。そうするとどうなるの?  それってつまり、詐欺師なのでは。これまでの今世を考えても、私に予知能力なんてない。捕縛される未来しか見えない。  愕然として慄いていると、使徒は私たちの目の前のカップに温かな緑色の液体が注いだ。途端にふわりと緑の香りがして、少しだけ気分が沈静する。多分薬草茶だ。 「お気持ちはお察し致します。少しは落ち着いてください。ようはメイさんはご実家のお手伝いをなさりたいのでしょう?」 「お手伝いといいますか、調理師になって実家を継ぐつもりでした。それに後取りは私しかいません」 「魔女様のご指示は絶対ですが、人の人生のすべてを規定するわけではありません」  使徒はそれまでと違って柔らかく微笑み、自らのステータスカードを私に示した。そこに書かれていた驚くべき内容に私と父は目を見張った。  『ルヴェリア王国フラクタの使徒』  職業どころではない。そこには場所まで指定されていたのだ。 「私がこのステータスカードを手にした時、絶望しました。私は行商人の二男で、これまで信仰心など持ち合わせていませんでした」 「それは……使徒様もご家族も突然なことで大変でしたでしょう」 「ええ。ですからマイヤースさんのお気持ちはよくわかります。私も行商を生涯の仕事と定め、旅空こそが私の人生と思っておりましたから」
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