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2-1 ニュースタイル辻占い
十歳の誕生日、私がステータスカードを受け取った翌々日から、私はリストランテ・マイヤースの厨房見習いになった。けれどもそれは仮の姿。私は辻占いになる、らしい。そういうことになっていた。
「メイちゃん、その、辻占いというのになると聞いたんだけど、そうじゃなかったのか? 魔女様のご指示だろ?」
「うん。でもすぐになれるわけじゃないでしょう? モレルさんだって一人前の漁師になるには随分かかったって言ってなかった?」
「おう。そうだなあ、普通にやれば一人前まで十年はかかるぞ。俺は八年で一人前になったがな!」
モレルさんは古くからの常連さんだ。私のことも小さい頃からよく知っている。私が『辻占い』という聞いたこともない仕事を魔女様から指示されたと聞いて、たくさんの常連さんが代わる代わる心配しに来てくれる。
「辻占いっていうのはとても珍しい仕事なの。だからすぐにはなれない」
「そうか。やっぱどんな仕事も修行がいるもんな」
「うん。そのうち立派な辻占いになるから応援して!」
そんなわけのわからない言葉と一緒に笑顔を振り向けば、みんなよくわからないなりに激励してくれる。辻占いという言葉の意味がわからなすぎて、誰も何も突っ込んでは来たりはしない。
けれども辻占いになるということは私にとっては既定路線で、だからその方法はその方法で探らなければならなかった。いきなり道路に店を構えるのは流石にハードルが高すぎる。だから私に何ができるか、あるいは何ができないのか、リハビリを兼ねていろいろ試してみる必要がある。
そして私にはリストランテ・マイヤースといういい実験場があった。
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