2-1 ニュースタイル辻占い

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「父さん、母さん。私の中の辻占いというものを試してみたいの。だから少し、好きにやらせてもらってもいいかな」 「その、ここは父さんの店なのだが」 「けれども私は辻占いにならないといけなくて、でも私にその方法を教えてくれる人は誰もいないでしょう? だから私が自分で研究しないといけないの。そのためにはどうしても協力してほしいの。この間も占い、当てたでしょう?」 「あれはまぁ、でもあれは占いなのか?」 「鍵が見つかる未来を予想して、その通りにして当てたんだから、占いで当てたんだよ」  混乱する父さんは不承不承といった感じで了承してくれた。  私はこの間、父さんの鍵の在り処を占いで当てたのだ。  厳密に言えば、困っていることはないかと尋ねれば、最近予備の鍵をなくしたと言われた。  探偵の基本は聞き取りだ。店の鍵のスペアキー。それがどんなものかを聞き取る。形は当然オリジナルキーと同じ。オリジナルと違って青のタグがついている。従業員が急遽必要になる場合に備えて納屋の特定の場所においてある。  誰か心当たりが無いか、従業員全員に聞いても持ち出したものはいない。母さんや従業員に鍵がないといって随分一緒に探したけれど、見つからないそうだ。 「いつからないの?」 「いつからかな。最後に使ったのは3ヶ月ほど前だと思う。それにみんなに探してもらったんだけど見つからなくてさ」 「鍵は納屋にかけてあったの?」 「いや、黒いポーチに入れてそれを吊り下げてるんだ。そこから取り出して従業員に渡してる」 「出して? ポーチのままじゃなくて?」  聞けば、ポーチが二重底になっていて、その奥に鍵が入っているらしい。  それなら鍵ではなく黒いポーチを探すべきなのだ。思い返せば私も何回か納屋にポーチがかかっているのを見たことがある。あの中には搬入物のチェックのためのマイヤースの頭文字が掘られた印が入っているから、てっきり印鑑入れだと思っていた。  そうすると従業員は鍵の状態しか見ていない。ポーチの中にまさかあると知りもしないのだ。それならポーチを探すはずがない。だからそもそも探すものの認識に齟齬がある。違う形状のものを探しても見つかるわけがない。
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