Prologue.リストランテ・マイヤースの看板娘

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「は?」 「どうしたメイ」 「あの、父さん、その、適職が……」 「ステータスカードというのは家族でも簡単に見せるものじゃないんだぞ? お前は調理人か何かだろう? そうで……」  困惑する父さんにカードを見せると、そのまま絶句し硬直した。  ステータスカードというのはその人間の将来の可能性を示すものだ。所属する領域によって少し異なるけれど、おおよその能力の傾向や特殊な能力、いわゆるスキルのようなものが備わっていれば、たいていはカードに記載される。  その中で適職というカテゴリは、その人が持つ能力や、これまでの人生や環境や性格、希望といったものが色々と考慮されて、いくつかの方向性が複数示される。  だから私や両親も、一番身近で接している調理師や給仕が表示されると思っていた。そして万一それらが全く適さない場合、たいていは役人や商人といったこれまでの生活で関連があった職業がいくつか表示されるもの、のはずだ。 「辻占いって何だ? どうしてそんなわけのわからないものがでるんだ? メイ、お前、占いが得意だったりするのか?」 「父さん、私も意味がわからない。占いなんて友達と花占いをするくらいだし、その、えっと、そもそも占いって何?」 「ひょっとしたら未来予知の特殊な能力や何らかの魔法の力を授かっているとか……」  そう思ってみたけれど、ステータスカードの表示はむしろ、魔力の素養が全くないとしか思えない。当然特殊なスキルなんて何もなく、かわりに『調理』とか『接客』とか、私がこれまで培っていたスキルが載っている。その事自体は私は予想していた。それなのに、全くそぐわない適職。  わずかに思いあたる事実に戦慄する。
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