Prologue.リストランテ・マイヤースの看板娘

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 誰にも言ってはいなかったけれど、私は転生者だ。前世は地球の日本の神津(こうづ)という町に生まれて、暴走トラックにはねられたのが最後の記憶。  それで私は今世に生まれたときから既に、前世の記憶を持ち合わせていた。そしてこの世界に魔法というものが存在して、モンスターも冒険者もいる世界だということを寝物語からすぐに理解した。だから私は将来魔法使いになったり、それがダメでも前世の探偵助手の仕事を活かしてシーフか何かになって大冒険ができればとか、まだ見ぬ未来に心をときめかせていた。  だから私は前世のラノベでたくさん読んだ通り、物心ついた時から必死で魔力というものを鍛えようとしたんだ。けれども魔力なんてものはさっぱりわからなかった。そもそも感知ができないの。眉間に力をいれれば頭が痛くなるばかり。だから魔法の素養というものはちっともないのだろう、そう思って諦めたのが多分6歳のころ。  それから私にとって戦いや冒険が土台無理だと思ったのは8歳くらいのころ。  リストランテ・マイヤースのオープンデッキからはきらめく海がよく見えた。そして地球では存在しないような巨大魚が何メートルもの高さの白い飛沫(しぶき)を上げながら突然波間から飛び出して海鳥をかじり取り、時には海竜のようなものが海を割りさいて街を襲い、多くの冒険者や兵士が傷だらけになりながらも総出でなんとか撃退する姿も。
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