Prologue.リストランテ・マイヤースの看板娘

4/4
前へ
/35ページ
次へ
 つまりまぁ、モンスターと戦うなんて正気の沙汰じゃないんだ。自分の細腕を見ても、あれらと戦える将来なんてちっとも浮かばない。それにシーフってつまり盗賊で、歓迎されるはずはないし、とりたてて手先が器用なわけでもなかった。  だから冒険者になるっていう夢もいつのまにか自然としぼみ、目の前の美味しいご飯ときれいな景色で、この料理店を継ぐのも悪くないな、と現実的な目線に落ち着いた、つまり諦めきったのが、多分8歳くらいのころ。  ……確かに、私はこれまでの10年間の半分、以上、は、魔法を使ったり冒険したいと思っていた。思っていたけれども! 「どうすればよかったっていうのよ!」 「メイ……? とりあえず気をしっかり保つんだ。父さんもものすごく混乱している。一度帰って少し相談しよう。この道を必ず選ばなくてはならないわけでもないはずだ、きっと」  父さんは恐る恐る使徒を見上げ、けれどもどうしていいのかよくわからない空気に居たたまれず、本来喜ばしいはずのステータスカードの授受を葬式のような雰囲気の中で過ごしたまま、逃げ帰った。  結局その、その誰も予想しなかった『辻占い』という内容に、私と父は固まるしかなかった。けれどもそのステータスカードの記載は私の想像を大きく越えて、そして私の運命を想像もしなかった方向に捻じ曲げたのだ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加