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「あの、父さん、母さん。私には無理だと思うの。魔法使えないし」
「そう、だよな。けれどもステータスカードに書かれていることが間違い、の、はず、が、ない……よな?」
「それに辻占いっていうのは、何?」
「私も聞いたことがないわねぇ。辻ってことは道端で占う、のかしら。占いを?」
そもそもこの世界に『辻占い』という職業はなさそうだった。
前世の私の記憶で辻占いというと、道沿いに机と怪しげな四角いライトをおいて座っている人たちだ。占われたい人がその前の席に座り、占い師が占う。
この世界に転生してから、私自身も道路で占いをしている人なんて見たことがない。そうすると、辻占いっていうのは何なんだろう。
「普通はもう少し大雑把な内容なんだけどなぁ」
「そうなの?」
「ああ。父さんは料理人と漁師、それから船乗り、商人が出た」
「母さんは、商人、女中、教師、ええとそれから……詩人」
「え、詩人? 母さん詩を作れるの?」
「その、若い頃は好きだったの。けれども普通はこんな感じで大雑把に示されてるものなの」
「それにこれまでの生活や環境なんかも影響される。父さんはこの料理店を爺さんから引継いだ。だから一番に料理人があって、それから友達に漁師や船乗りが多いからきっとそれが出て、商売柄繋がるから商人が出たんだ。こういう職業ならついても上手くいくから」
私は手の中の小さな名刺大のカードを再び見つめる。
そこには『辻占い』以外に何もかかれていなかった。透かしても温めても。
この職業の記載もそもそもおかしい。普通は例えば海鮮料理人とか雑貨商人とか、そんな指定があることもほとんどないらしい。だからきっとあったとしても『占い師』とかになるはずで、父さんも母さんも、『辻占い』なんて誰も聞いたことがない職業が乗るのを聞いたことはないらしい。
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