1-1 占いについての将来設計なんて全然ないわけで

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「ねぇ、そもそも私がその、占い師になれるとは思えない、んだけど、そうだよね」 「けれども魔女様が間違うはずがない。……幸いなことに明日は休みだ。伝手を頼って何とか占い師に会えるように取り図ろう」  父さんの額には、ようやく苦悶が覗き始めた。このステータスカードが示す未来は、私だけでなく私の家族とこの料理店の未来をも全て覆すものだ。私は一人っ子で、いずれは婿を取る予定だった。私がこの店を継がなくては、このままでは祖父が始めたこの店が父の代で絶えてしまう。こんなにみんなに愛されて、繁盛しているのに。  その事実が、話し合いを続けるうちに、じわじわと私たち家族の間に浸透する。  私が店を継がないなんて、そんな未来は誰も想像もしていなかった。明日は調理師になるお祝いに、コックコートやシェフ帽、それから包丁なんかの道具を揃えるためのお休みに決めていたのに。  けれどもこの世界ではステータスカードというのは、例えどれほど疑わしくても正しいはずなのだ。この世界の魔女という存在は前世の神にも等しい存在。そして魔法が存在するこの世界では、前世の神と異なり魔女は確かに実存し、この世界を動かしている。そしてこの手元の小さなカードは、この領域を統べる魔女様がお作りになり、その領民に与えるものなの。だから間違いがあるはずがない。  だからまず、本当に、万一、占い師になる道があるのか確かめる。それをしないと始まらない。可能性を全て潰さなくては、どこにも相談なんてできやしない。魔女様、つまり神様に『あなた間違ってるんじゃないですか』なんて言いに行けるはずがないんだから。
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