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そして父さんが商店会の繋がりでなんとかねじ込んだ占い師との面談では、あっという間に結論が下された。
「その子が占い師に? 無理だよ」
「は? あの」
「だってあんた、魔力を感じ取れないだろ? 魔力回路がぴくりとも動いていない。いいかい? 魔法を使うには魔力がわからなければ話にならないんだ。お嬢ちゃん、これまで魔力というものを感じたことはあるかい?」
「ない……です」
その占い師は海商組合の顧問占い師で、それなりの力がある占い師なのだそうだ。海商組合の応接室は豪華で、その占い師も水晶玉は携えてはいなかったけれど、たくさんのキラキラした指輪や飾りをつけていて、まさに占い師っていう感じだった。
ふくよかな香り溢れる紅茶を恐縮しながら頂きつつ、占い師の次の言葉を待つ。
「ふむ、確かにお嬢ちゃんのステータスカードには『辻占い』とは書いているが、これは占い師なのかい? 辻占いってのは何だ」
「あの、先生もご存知ないのでしょうか」
「辻ってのはあれだろ、道端だろ? そんなところで何を占うっていうんだ?」
「それは私どもにも皆目検討がつかず……」
「ふぅむ。何かの間違いじゃないのかね?」
「間違い?」
占い師は急に声を顰め、私たちに耳打ちをした。
「ああ。魔女様のご指示も極稀に、本当に極稀に間違うことがある、という噂を聞いたことがある。本当かどうかはわからないがね」
私たちは驚愕して、ぽかんと口を開けた。
そしてそれは、藁にもすがる私たちにとって重要な話。
「本当に、そんなことがありうるのでしょうか」
「ない、とは言い切れない。だって私は未来というものは変わりうると思っているからだ。だから魔女様が全てを定めておられるという話に、僅かばかり懐疑的だ」
いつのまにか私たちの小さな声は少しだけ震えていた。
未来。確かに未来というものは変わりうる、と思う。けれども魔女の力を疑うなんて、そんな発想はしたことすらなかった。
魔女の指示が間違う。そんなことがこの世界ではおおよそ信じられないことは、私はこれまでの十年の暮らしで熟知していた。けれどもこの占い師が言うとおり、私は魔力なんて欠片も感知したことがない。
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