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行く当てもなく自転車を走らせるのも限界だ。限界が訪れるということは俺は生きているのだろう。
ロクに運動をしていない酒を含んだ体は程なくして悲鳴を上げた。くたくたになりながら意地だけで漕ぎ、今は誰もいない公園へ辿り着いて、砂だらけのベンチへへたりこむ。
桜が散っている。
あはは。俺みたいなのにもこんな静かに散ってくれるんだな。
平等なんてない世界だと思っていたが。
昔は――。
小学生とかそういうガキの時は困ったことが起これば先生を呼んだ。それで解決できた。先生はヒーローなんだと思った。
同時に俺にはもう1人ヒーローがいた。
教室でクラスの女子が倒れた時、俺も含め全員がおろおろした。どうしたらいいか分からない。こういう時すぐに体を起こしたりしていいのかも分からなくて、うろたえていた時「早く! 高坂、先生を呼べ!」と言った男がいた。
道川だった。
「高坂」は俺の名字で、なぜ名指しだったのか後から聞くと「クラスで1番足が速いのはお前だからな」と俺の背を叩いた。
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