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デルフィヌスは、カノープスやシャウラと同じく、報酬さえあれば何でもする、男装の麗人である。日ごろ言葉も発さず、ジェスチャーもせず、目も合わさず、瞬きすらほとんどしない。どうやら、自分の意志を示すと責められると強迫観念に憑りつかれているらしく、勿論今日も、何もしゃべっていなかった。
「何事も、仕事は文句言わずにやった方が、結局早い」
「あいつには、プライドってものがないのかしら」
「仕事にプライドなんかいるかよ。必要なのはどんな依頼にも対応できる健康と、報酬だろ」
「ねぇ、此処に転がってるものはどうするのよ」
シャウラが真っ赤なヒールで、床に倒れていた死体を突く。つい先ほど転がった死体とは異なる、数日前にカノープスが熟した仕事の結果だ。首から上がぐちゃぐちゃに消し飛んでいて、一部、骨が、生え始めの植物のように飛び出ている。
「こういうのは、どうやって捨てるのかしら」
シャウラの組織には、人肉を食べる美青年がいて、死体を捨てることがないのだろう。かと言って、カノープスも、いつも部下にやらせているので、よくわからない。金髪を掻いて、バツが悪いが故の、小さな声で答えた。
「シャウラ、大抵のものは、燃やせば燃えるんだぜ」
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