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泣きながら街を歩いて、気が付いたら魔女――と見紛った神楽さんに助けられていた。
「そうか……そういうことだったのね。あの時の様子から想像は出来たけど」
神楽さんは、私の話を最後まで静かに聞き終えると、閉ざしていた口を開いた。今更だけど何で他人にこんなことを話したのだろうと思う。
でも……話して良かった。少しだけ気持ちが軽くなった――ような気がする。
「ありがとうございました。こんな話を聞いていただいて。お世話になりました。これからはお酒も控えます。それでは私……」
失礼します……そう言って立ち上がろうとした私の掌に神楽さんの掌が重なった。
「待って……貴女、アルバイトは……?」
「あんなことになってしまっては、もう……バイトはまた捜します」
「学費とか生活費は?」
「少しなら蓄えもありますから」正直、あまり貯金は多いとは言えないけど。
「……良ければだけど、ウチでバイトしない?」
バ、バイト?ここ探偵事務所だけど……私が探偵を?
「私、探偵はしたことありません」
神楽さんは立ち上り、私の両肩に手を置き微笑んだ。
「東雲さん、探偵をしたことなんて大抵の人はありません。それに貴女にして欲しい仕事はまた別の仕事よ。まあ、座って話を聞いて」
神楽さんの両手に力が入り、私の肩を押し下げた。
「貴女にして欲しい仕事というのは……」
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