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「はああ……けんた、ごめんよ……俺またケーキ用意できなかった……」
「……けんた?」
彼は弱々しく頷いた。
「せっかくの誕生日だったのに……クリスマスと被ってたせいでこんな目に……」
「誕生日……」
それを聞いて一瞬気持ちが揺らいだが、私はすぐに店の奥へ捌けた。
「はああ……どの店回っても、大好きないちごのケーキは売り切れで……去年も用意できなくて大喧嘩したのに……」
なおも嘆き続ける彼の前に、私はあるものを差し出した。それはいちごのホールケーキで、真ん中のチョコプレートには『けんたくん、おめでとう!』と書かれている。
「"けんたくん"で、お名前合ってます?」
尋ねてみたが、彼は目の前に出てきたケーキが信じられない様子だった。
「えっ、だってケーキは完売したんじゃ……」
私は思わず苦笑いした。
「まぁまぁ、細かいことはいいじゃないですか!」
しかし、彼から疑念の目が向けられる。私は必死に言い訳を考えた。
「あれですよ、あれ……このケーキを用意してくれたのは」
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