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* * *
「も〜分かりましたよ〜」
僕はとうとう折れた。
「では約束通り、あたたかいコーヒーを買いに行きましょう!」
そんな僕を横目に、彼は意気揚々と歩き出した。
いつまで待っても来ないバスを諦め、結局ふたりでタクシーを利用……お互いの目的地が奇遇にも近くて、タクシーを降りてからそのまま解散しようとしたが、『缶コーヒーのお礼をするまでは離れられない!』と腕を掴まれた。『百円くらいなんでいいですよ』と宥めてはみたものの、彼が僕の腕を離すことはなかった。こうなってはキリがない。加えて、待ち合わせの時刻も迫っており、遅れるわけにもいかなかったので、仕方なくお礼をしてもらうことになった。
「自販機ないですね……」
そのとき、先頭にいた彼が呟く。
見渡してみたが、たしかにあのフォルムがどこにも見当たらない。そこで早速、僕は代替案を提示した。
「だったら、道を挟んで向こうの」
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