16人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
「コンビニで買おうかな……」
私は煌々としているコンビニに目をつけた。
少し前、店に滑り込んだ男性が言っていたように、クリスマス当日の、こんな遅い時間に、予約もせずに、いちごのケーキが売れ残っていたらたしかに奇跡かもしれない。それでもその僅かな奇跡を期待して彷徨ってみたが、どのケーキ屋にもいちごのケーキは置いてなかった。最近のコンビニは品揃えもいいと聞くし……
"ピーンポーン"
コンビニの入り口のチャイムが鳴る。
店内に足を踏み入れると、早速クリスマススイーツのコーナーが目に入ったが、どうもいちごのケーキは見当たらない。
「ないかぁ……」
思わず落胆したが、すぐにとあるものが目に止まる。それはお菓子のギッシリ詰まった赤いブーツで、全長五十センチくらいの特大サイズだった。
「これ、好きそうだな……」
そんな直感が働き、手を伸ばす。しかし、私と全く同じタイミングで、赤いブーツにタッチする手があった。
「「あっ」」
顔を上げると、体格の大きい男性と目が合う。私は数秒考えた後に、赤いブーツから手を離した。
「「あの、よかったら……」」
そのまま手で『どうぞ』のサインを作ったが、同時に向こうからも『どうぞ』されてしまった。こういうとき、必ず一歩引くタイプなので、自分がされると困ってしまう。何か妥協点はないだろうかと少し考えた。
「プレゼントですか?」
とりあえず第一投。私は相手の出方を伺うことにした。
彼は口髭を触りながら宙を見つめた。
「プレゼントというか……みんなで分けて食べる感じです。四、五人くらいで……」
なるほど。
彼の回答を聞いた私は深く頷いた。
そして、目の前にある赤いブーツを持ち上げ、彼に差し出した。
「だったら、どうぞ!」
彼はひどく驚いていた。
最初のコメントを投稿しよう!