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「私、プレゼント用にいいかなって思ったんですけど、よくよく考えたら、ひとりでこんなに食べ切れないと思うので……」
言い訳も追加する。
それを聞いて、彼は渋々赤いブーツを受け取った。しかし、しばらくして彼がモソッと呟いた。
「じゃあ、分けます?」
思いがけない提案。私はフリーズしてしまった。
彼は構わず続けた。
「実はこの近くで集まる予定で……食事も用意してるから、お菓子全部は食べないと思うんです……うん、とりあえず買いますね」
なんて返答すべきか悩んでいると、彼はそそくさとレジの方に向かっていってしまった。
店内の時計を確認したが、まだ少しだけ余裕があるようなので、たぶん待ち合わせに遅れることはないと思うが……
「あぁ〜、やっぱりちょっと暑いな〜」
赤いブーツを買い、店の外へ出た彼は、羽織っていた黒いコートを脱ごうとした。
私は少しだけ遅れて店の外に出たのだが、そのとき目に飛び込んできたのは、真っ赤な上着と、真っ赤なズボンだった。袖と襟元の白いラインが映えていて、大きなお腹には黒いベルトも巻かれていた。それから、真っ白ではないが口の周りに髭を生やしているし、麻袋ではないが大きめのエコバッグを担いでいる。
その姿はまさに……
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