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「わー! サンタクロースだー!」
すると、向こうから聞き馴染みのある声が聞こえてきた。その姿に思わず声が出る。
「あれ?」
「え?」
「あっ」
「あぁ!」
ほぼ同時に、四人の声が冬の空に響き渡る。私は混乱した。
「えっ、ええと……?」
「なんだ、"のぼる"じゃん!」
すると、こちらに走ってきたうちのひとりが、コンビニから出てきたばかりのサンタの肩をポンと叩いた。
「お前、似合いすぎ! 本物のサンタクロースみたいじゃん!」
"のぼる"と呼ばれたサンタは、苦笑いをしていた。
「そういう"はじめ"は? ちゃんと着てきたんだろうな?」
「もちろん! ほら!」
"はじめ"と呼ばれた男がコートを少しだけめくると、コートの中から赤い服がちらりと見えた。
ふたりが親しげに話し始めたのを見て、私は唯一知っている彼の元へ駆け寄った。
「なに? 知り合い?」
彼は首を振っていた。
「違う違う! バスが遅れてて、たまたま一緒にタクシーに乗っただけで……ていうか、そっちこそどうしたんだよ。サンタと一緒に……」
小声で話す彼に合わせ、私の声も自然と小さくなる。
「いや……待ち合わせまでに時間があるからコンビニに寄ったの。そのときに買おうとしたものが被っただけで……」
「買おうとしたって何を?」
彼に聞かれ、思わず言い淀んだ。
「いや……何をって言われると……」
「決まりだな!」
そのとき、"はじめ"と呼ばれた男が大きな声を出した。
「僕たちは、あなたたちには借りがある。もし時間があれば、少しだけ寄っていきません?」
そう言って、彼はとある建物を指さした。喫茶店のようだったが、扉には『closed』の看板が見える。
不審に思いつつも、私たちは謎のサンタふたりに促され、店の中へ足を踏み入れた。
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