雪に染まる

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――今日、東京に初雪が降った。 微かな音を立てて降りしきる雪は、すでに足首の辺りまで積もっていた。 「天気予報じゃ、雪は降らないって言ってたのにね」 僕の隣を歩く彼女はそう言って、小さな白い雪の粒を手のひらで受け止める。 「冷たいけど、綺麗だね。雪なんて久々かも」 彼女の手のひらに不時着したそれは、少しの間だけ原型を留めていたが、すぐにその白さを 失い無色透明な水滴へと変わってしまう。 「雪って不思議。温度を与えると消えて見えなくなっちゃう。何でだろうね?」 彼女は自分の手のひらから僕の方に目を向けて、そう言った。 恐らく彼女は “雪はどうして白いのか?” という科学的な根拠を知りたい訳ではなく、ただ純粋に自分が抱いた疑問を誰かと共有したいが為に問いかけてきたのだろう。 だから、僕はすかさず「確かに不思議だよね」と彼女に返答をした。 彼女は丸っこい目を少しだけ細めて微笑んだ。 「ね、ほんと不思議」 どうやら推察通りだったようだ。 「今日、雪が見れて良かった」と彼女は嬉しそうに言う。 マスク越しでも、彼女の口角がほんの少しだけ上がっているのが分かった。
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