それでも君が

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「やったの、今井だけだし。俺ら、止めたし」 行こうぜ、と言って廊下を走りだした仲間を、今井と呼ばれたその生徒は呆然と見ていたけれど、はっと我に返ると慌てて後を追いかけた。 ギャラリーの向こうで、華原先生達の声。 「何事ですか! 他校の生徒というのはどこです!?」 先生を連れてきてくれた藍本さんに1年生の女の子たちが泣きながら事情を説明している。 私の姿を認めた藍本さんが、驚いて目を見開いた。 「さ、坂上先輩。制服が……」 「あ、うん。えっとジャージに着替えてくるね。これじゃ、歩くたびに廊下が濡れちゃう。……泉くんのおかげで相手の男子生徒の高校に連絡いってるらしいから。私、こんなだし。少し離れて大丈夫かな?」 「はい! 分かりました。泉!」 藍本さんが泉くんを呼ぶ。 「坂上先輩、保健室に連れて行って」 「藍本さん、大丈夫だよ。私1人で……」 無理に笑顔を作ったら、緊張の糸がぷつりと切れた。 「あ、あれ?」 急に足に力が入らなくって、私はその場にお尻をついた。
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