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「坂上先輩!」
「あ……。はは、皆が来てくれて、安心したみたい。力が抜けちゃ……」
床についた私の身体がふわりと持ち上がる。
遠巻きにきていた生徒たちがわぁ! と歓声をあげた。
「藍本、のあ先輩がさっき説明したとおり、相手の身元分かってるから。もうすぐ東高の先生来るって華原先生に伝えといて」
藍本さんが力強く頷く。
「うん! 分かった」
「泉くん……!」
「保健室、行きましょう」
泉くんから抱きかかえられた私は、慌てておりようとするけど叶わなかった。
「私こんなだし、泉くんが濡れちゃうよ! 歩ける。私、歩けるから!」
「駄目です」
「泉くんに迷惑かけたくない!」
「迷惑だとか思ってないです。のあ先輩は気にしないで俺に抱っこされててください」
「気になるよ! 離して!!」
「嫌です。絶対嫌です」
「……絶対嫌って……」
見上げると泉くんと視線が合う。
申し訳なさそうに彼が眉を下げた。
「助けに来るの遅くなってごめんなさい。のあ先輩」
そんな声で言われたら、もう私は何も言えなかった。
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