それでも君が

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保健室は無人だった。 人を呼ぶために飲食店の出店は学校の入り口付近にも設けてるし、小さな子供達も多いという事でテントを張って、簡易の救護室を外に作っているからそちらに養護の先生も行っているんだと思う。 保健室のソファーに私をおろすと、泉くんは保健室の白い棚をあける。 「タオルと……ジャージ、借りましょう」 「ジャージもここにあるの?」 「具合悪くて戻しちゃったり、怪我して制服よごれてしまった生徒の為に2着くらい常備してるんですよ。ここ」 「詳しいね」 「俺、保健委員だから」 はい、と渡されたタオルで、まず髪を拭く。 コーラの色だけじゃなく匂いまでがしっかり制服に付いてしまっていた。 「泉くん、保健委員なんだ。知らなかった」 「言ってませんでしたっけ」 「うん。初めて知った」 振り向いた泉くんに笑いかけると、泉くんは困った顔になって、私からおもむろにタオルを取り上げた。 「……泉くん?」
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