それでも君が

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数秒の沈黙が訪れた。 「……え?」 泉くんが、固まっている。 「で、でものあ先輩にはもう翔太先輩が……」 「ちゃんと伊吹くんにはごめんなさいと伝えました」 「え、え、え? のあ先輩が今、俺に好きって言った……?」 「……」 「好きって……言ってくれた?」 困惑気味の年下の男の子に、信じてもらう為、私はいつかの彼のセリフを借りて言う。 「『好きじゃ足りないです。大好きです』」 泉くんの顔が朱色に染まる。 顔を覆った泉くんはへなへなと座りこんで、掠れた声で言う。 「……俺もです。先輩」 沢山の『好き』をくれてありがとう。 私が『好き』に気づくまで、沢山待っていてくれてありがとう。 これからは私が君に伝えるよ。 大好きでたまらない、この気持ちを。
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