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親父さんは座っていた執務机から立ち上がり、応接セットのソファーに腰を下ろした。
「えっと…若いのに…なんで親父さんなのかな?って」
「ああ。そうでしたか。俺達の世界では、血の繋がらない…親ではない人間を親父と呼ぶ事もあるのですよ」
「…えっと…。
あ!ヤクザって事ですか!」
「お前、佐渡(サド)さんに失礼だろ!」
幸太にそう言われ、確かに失礼だったかと思う。
「いえ。それより、小山葵衣さん、立ってるのも疲れるでしょうから、俺の向かいにどうぞ」
「えっ…」
そう戸惑うのは、座れと言われた事ではなく、私の名前を知っている事。
そもそも、私は中さんの事で話があるのだとこちらに連れて来られたのだと思い出す。
この佐渡さんと中さんがどういった関係なのか分からないけど、私の事も含め、色々と知られているのだろう。
「では、俺は失礼します」
幸太は、部屋から出て行った。
私と佐渡さんの二人になる。
やはり、中さんの事で話があるのはこの人なのか。
「彼は、摩天(まてん)という半グレグループを仕切っている、武山幸太(たけやまこうた)。
中君の和同連合とは、犬猿の仲って所でしょうか」
幸太って人もやはり半グレだったんだ。
そして、中さんとは仲が良くないって事なのだろうか?
「それより、座りませんか?」
佐渡さんは手で向かいのソファーを指している。
なんとなく、笑っているのにそれが怖くて逆らわずに従う。
「…失礼します…。…うわっ、ふかふか!」
座った皮のソファーが想像以上に柔らかくて、驚いた。
そんな私を見て、佐渡さんはクスクスと笑っている。
その感じは怖くはない。
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