兄を殺したのは

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中さんとエレベーターに乗り、ビルの最上階へと行く。 エレベーターを降りると、社長室と書かれた表札のある部屋が見える。 横に居る中さんが息を飲むのが分かる。 それは何かを覚悟するように。 中さんは社長室の前に立ち、扉をノックした。 すると、どうぞ、と男性の声が聞こえた。 中さんは扉を開けて中へと入る。 私もいいのかな?と思いながらも、中さんと同じように部屋に足を踏み入れた。 「中君!久しぶり!」 現れたのは、中さんより少し年上に見える男性。 背の高い中さんよりも、背が高そうに見える。 この人がこの会社の社長なのだろうか? 若いけど。 社長室の真ん中に立っている。 「お久しぶりです。一枝さん」 中さんはその男性を、ひとえさんと呼んだ。 中さんの表情は固いけど、その一枝さんは満面の笑み。 「いっちゃんのお葬式以来だよね? スーツなんか着て、中君本当に立派になったよね。 隣の可愛い子は、中君の彼女かな?」 一枝さんはそうやって中さんに会えて嬉しそうなのだけど。 中さんは相変わらず、愛想笑いさえしない。 そして、一枝さんの口にした"いっちゃん"は多分、中さんの兄である一夜さんの事だろう。 「一枝さん。凄い失礼な質問しますけど。 俺が間違っていたら、殴ってくれて構いませんから」 「え?殴るとかどうしたの?」 「竜道会の佐渡さんと会いました。 ある人物に1億で頼まれて兄を殺す手配をしたと…。 兄の親友である一枝さんがそんなわけないと思いますが。 兄の周りでそうやって1億ものお金を用意出来るのが、一枝さんしか思い浮かばなくて…。 違いますよね? 俺の勘違いですよね?」 中さんの声は震えていて。 それは、その答えを聞く事を恐れているようで。 「佐渡君、口軽いな。 口止め料も込みの値段なのに」 肯定とも思うような言葉を、一枝さんは口にする。
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