兄を殺したのは

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「なんで…兄ちゃんを」 「簡単に答えると、復讐なんだけどね。 うちの弟の永倉二葉(ながくらふたば)も聖王会に居たのは中君も知ってるでしょ? いっちゃん、俺の大事な弟の二葉が邪魔になって殺したから」 「兄ちゃんが、一枝さんの弟を? 何か誤解とかあるんじゃあ…」 「誤解?ないない。 いっちゃんは俺の可愛い弟を殺した。 だから、俺がいっちゃんを殺し―――」 中さんは話を遮るように一枝さんの胸ぐら掴み、近くにあった執務机へと押し倒した。 ガン、と大きな音が響く。 「親友のあんたが本当に兄ちゃんを…」 「俺が加賀見一夜を殺した。 知ってると思うけど、俺はいっちゃんが撃たれる瞬間電話で話していた。 親友としていっちゃんの誕生日を祝う電話だったんだけど、同時に命日になったね」 「ふざけんな!どんな理由が有ろうと許せない。 ぶっ殺してやる」 中さんは机の上にあった高級そうなボールペンを掴みそのまま片手の指でキャップを外す。 ボールペンの先端が光っている。 「殺せばいいよ。 復讐される覚悟は出来てるから」 「そうか」 「けど、中君じゃないんだよ。 君じゃ、割に合わない」 「どういう意味だ?」 「だって、復讐されるならいっちゃんと強い繋がりのある人間がいい。 だから、君じゃない。 中君も気付いてたでしょ? いっちゃんが中君の事が大嫌いなの」 そう一枝さんが言った瞬間、中さんの目が揺れた。 「だって、中君の母親は、ずっといっちゃんの父親の愛人だった女性でしょ? いっちゃんにとって最愛の母親が亡くなって、そして、すぐに父親の愛人が継母になって。 おまけに子供迄産んで。 それも、家庭でのいっちゃんの居場所を奪う為に継母が産んだ子供で。 そりゃあ中君が憎いに決まってるよね? いっちゃん、大人な態度でそんな腹違いの弟の中君に優しく接していたけど、いっちゃんわりと幼稚な所あるから」 「…うっせぇ」 中さんはボールペンを持つ手を高くあげた。 「中さん、辞めて!!」 私がそう叫んだと同時に、大きな音が響く。 中さんがボールペンを執務机に突き刺し、折れた音。 それは、一枝さんの左耳のすぐ横。 「…あんたに言われてなくても、分かってる」 中さんは体勢を真っ直ぐと立ち上がると、そのまま社長室から出て行った。
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